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映像作家 寺本勇也 長編インタビュー前編「一瞬の判断が一生残る」

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──まず自己紹介をお願いします。


<寺本勇也>

紹介していただく時とかに、最近は劇場上映された作品を何本か撮ってるので、映画監督って書かれることが増えたんですけど、僕としては、媒体問わずいろんなジャンルで作品を作っていきたいので、「映像作家」とかそんな感じでお願いします。


──普段どんな活動をしているか教えてください。


<寺本勇也>

直近だとシノノメさんにも観に来ていただいた映画『ゆい』に時間がかかりました。

メインの仕事は映画制作なんですが、合間合間でSNS用のショート動画とか、広告映像のディレクターもやってます。


今28歳なので、若手に振りやすい規模感の作品が多いんですよね。だから作品によってはディレクターだけじゃなく、カメラとか編集も兼任することがあります。なので総合的に幅広く携わってる状況です。


──どんな経緯で映像作家になったのでしょうか?


<寺本勇也>

実際気づいたらなっちゃってたってことだと思うんですけど。(笑)


でも学生時代はもう全く勉強できなかったです。

だけど、テストで100点取る人や、なんなら先生とかよりも、想像力では全然上回ってると思ってたんです。それは体感としてありました。尖ってただけなんですけど。


中学の卒業を控えてまわりが進路を決めてくなか、自分の場合は、とりあえず死ぬまでの間、たくさん笑ってられる人生にしたいと思ってて。じゃあ普通の仕事よりも笑ってられる時間が長い楽しい仕事はって考えたとき、『お笑い芸人』か『映像制作』のどっちかだと思ったんです。

それで表現の幅が広く、より自由度が高いのが映像の世界だと思いました。


だから今でも芸人さんへのリスペクトはすごくあって、映画デビュー作『追想と』の主演は板尾創路さんだったし、その後の『傷』ではバッドボーイズの佐田正樹さん、最新の『ゆい』だと宮迫博之さんが出演してくださったり、みなさん普通の俳優さんとはどこか違う表現力があるのでお世話になりっぱなしです。


──どうして映像の現場は笑いが絶えないと思ったのでしょうか?


<寺本勇也>

ちょっと矛盾しちゃうんですけど、現場が毎回楽しいかと言われるとそうじゃなくて、むっちゃシリアスな時間も半分くらいあります。大人たちが真剣勝負してるから当たり前なんですけどね。でも徹夜だったり、猛暑や極寒、大御所の緊張感とか、そんな笑ってられないぐらい壮絶な現場でも、後々振り返った時には面白かったりするんですよ。「あの時マジでやばかったよね〜」みたいな(笑)

だから結果的に全て楽しいってことなんです。


──壮絶な現場もあるのですね。


<寺本勇也>

たとえば台風であったり、それこそ予算が尽きかけるとか、気持ちだけじゃうち勝てないトラブルが日々起こるんですけど、その逆境すらを楽しめちゃうような人たちが、この業界の集まりな気がします。


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──映像とお笑いの二択になった、きっかけになるような人物はいたのですか?


<寺本勇也>

最初に影響されたのは松本人志さん。

発想力を極めた人こそが最強であるっていう価値観に、どれだけの劣等生たちが勇気づけられたんだろうって思います。


映画監督に関しては数えきれないですね…。

ジョン・ウー監督やチャウ・シンチー監督であったり、(信念を貫く負け犬たち)をパワフルなタッチで描く監督たちが好きで、「僕らのために作られた映画なのかな」ってありがたく受け取ってきました。


──映画、映像を作る上で大事にしてることやこだわりはありますでしょうか?


<寺本勇也>


今って誰でも簡単にスマホで作品を撮れちゃう時代じゃないですか。

ユーチューバーとかティックトッカーとか。まず大前提その人たちとの差を見せたいっていうのはありますね、常に。


その差というのは何かっていうと、ひとつの作品のなかで、どれだけブチかませてるかってことのような気がしてて。


「君たちにはできないだろこれ」っていうショットや芝居を撮るようにしてます。


正直言うと個人的には、内容がまとまってる綺麗な作品だとか、役者さんでもただお芝居が上手いだけっていうのはあんまり興味がなくて。


常に自分が惹かれるのは、多少粗くてもいいから、振り切った、殻を破ってる表現。


だから僕もなにか作る時は、ワンカットでもいいから、枠に収まらない、爪痕を残せるような表現をしたいなとは思っています。CMとかだと難しいんですけどギリまで粘ってます。


僕はAOIPro.っていう広告系の制作会社に新卒で入ったことによって、媒体をまたいで作品を撮ってきたので、普通の映画監督に比べてジャンルが雑多で、戦が綺麗じゃないんですよ。


だからもう開き直って変なことができるっていうか、「寺本こいつバカだな」って思われたって全然構わない(笑)それを強みにできたらいいんですけどね。


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──映像の現場は、初めて一緒に仕事をする俳優さんも多いと思うのですが、毎回どのように距離を縮めているのですか?


<寺本勇也>

理想を言うと、やっぱり現場で初めましてっていうのは避けたいですね。

現場で初めましてだと、その人の魅力を出しきる前に収録が終わっちゃうってことが多くて。なので余裕があるときは、事前にリハーサルっていう名目で集まるんですが、そこでする雑談から探っていきたい部分があって、その人たちの癖であったり、間合いを測るというか。事前にその俳優さんのことをわかっていると、「ここチャームポイントだから伝わりやすくワンカット足そうか」とか、「こういう芝居得意だからカット割らずに長回しでやってみようか」ってことが出来たりします。


ただ有名な俳優さんだと事前に呼べないことの方が多いので、現場では瞬発力が必要です。

現場って基本時間がないので、1回本番前にテストでお芝居見ますけど、それこそ撮影部も照明部もセッティングが終わってるなか、「じゃあテスト見ました今から30分休憩します」なんてことはできないんですよ。

テスト終わったら30秒後には本番なので、その30秒間でこちらの要望をどれだけ俳優さんに伝えられるかが勝負です。


──結構即興力が求められるんですね。


<寺本勇也>

意外と1番大事な気がします。

毎秒毎秒、常に判断してるわけですよ。

「この照明はオンかオフか?」「この時の目線はどこか?」「カメラは寄るか引くか?」「今の芝居はOKかNGか?」

さぁ2秒後にお答えくださいみたいな。(笑)


その一瞬の判断がフィルムとしては一生残るわけじゃないですか。

だから常に大喜利をさせられてる感じで、ベストアンサーをその都度出さなきゃいけないので、気が抜けないですよね。

何年やろうが慣れないですし緊張感凄いですけど、メンタルが安定してるときはそれすらも楽しかったりします。


──寺本さん自身が演じてみせるっていうこともあるんですか?


<寺本勇也>

全然あります。助監督時代に衝撃だったんですけど、売れてる映画監督って、みんなお芝居が上手いんですよ。

シャイな人が多いんでメイキングとかで使われてないんですけど、怖い監督さんとかでも女の子の芝居とかやってみせてますよね。

やっぱりすごく的確だし、もちろんわかりやすい。

そういうのを見てきたんで、経験が浅い俳優さんには僕もやるようになっちゃってますかね。


──撮影に臨むにあたって緊張とかってされますか?


<寺本勇也>

学生時代の自主映画から今日まで、クランクインの前日に寝れたことは1回もないです。

いつも初日の前夜は、なんなんですかね…プレッシャーだと思うんですけど、なんか寝れなくて(笑)

で、徹夜で行くんだけど、アドレナリンなんですかね、現場で眠くなったことは1回もなくて、あくびなんかしてる余裕ないです。


後編に続く──




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寺本勇也


学生時代より特撮番組の現場で助監督として活動。

株式会社AoiProに入社し、数多くのCM作品に携わった後に独立。現在は映像制作会社である株式会社イントリニティに所属し、劇場作品や広告映像の監督として幅広く活動をしている。

国内最大の縦型映画のコンテストである「TikTok TOHO Film Festival」で監督作品が2年連続でファイナリストに選出された。



写真 アヅマコウジ


インタビュアー・編集

ko shinonome (7777777 director)




 
 
 

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